国の補正予算を踏まえ、愛媛県の対応に関する要望書
2023年11月27日
中野泰誠
国の総合経済対策補正予算について、愛媛県として対応を求めること
現在、市井で聞かれる声は「物価が上がっている。しかし、賃金はすぐには上がらない、高齢者の年金は増えない。生活は厳しい。」といった内容です。国際的なエネルギーコストの上昇に引っ張られているとはいえ、出口が見えない・改善されていないことが国民の不満に繋がっています。
円安傾向は続く中、中小企業で海外に積極的に輸出し、円安の恩恵を大きく受けるという企業は地方では少数である一方で、例えば日本の世界的な自動車メーカーは円安を背景に莫大な利益増、料金値上げを行なったエネルギー会社も利益増、といった状況を見ると「羨ましい」という状況が続いているのではないでしょうか。
ますます国民の中に不公平感が広がる中、国は「ばら撒き」を軸とした経済政策を打ち出し、報道が選挙対策を念頭に先行した結果、さらに内閣への支持率を下げる、つまり国民から支持されない方針を打ち出しています。
いくらばら撒いても将来への不安や、不満が先行し、国民の効果的な投資と感じられていないのではないでしょうか。
せっかく使う今回の補正予算についても、愛媛県としてはこの流れを断ち切り、いかに必要とする声、公平感のある声に対応できるかが鍵のではないか、と考えるため、日々の活動の中でいただく声をもとに要望を提出させていただきます。
物価高により厳しい状況にある生活者・事業者への支援
国の提示:物価高により厳しい状況にある生活者・事業者への支援
所得税・個人住民税の定額減税、低所得世帯への支援が組まれている。
単純なばらまき、現金給付ではなく、例えば愛媛県産品を購入して配布・もしくは世帯が選択できるようカタログ化し県内事業者自体を支えること。そこでの選択の傾向や何が足りないかの要望が把握できれば、今後の支援の在り方についても傾向と対策が検証できる。また、求める支援が物品に限らない可能性もあり選択メニューの中には、教育を受ける、県内施設を利用するなど、体験にも使うことができるようにすること。
国の提示:燃料油、電気・ガスの激変緩和措置を2024年4月末まで、漁業者、施設園芸事業者等向けの燃料油価格の激変緩和措置も引き続き実施。
学校給食費、プレミアム商品券等発行による消費下支えの取組、LPガス使用世帯等への支援、食品ロス削減、フードバンク・こども食堂支援
これから本格的な冬を迎えるにあたって、家庭および生産現場の燃料代高騰への対応は継続してお願いしたい。
原材料費の高騰などにより給食食材の調達が難しくなっているという声を聞く。県産品の購入支援などで、地域経済を下支えする仕組みづくりをさらに推進してほしい。給食の供給について米を中心にするなど長期的に小麦が確保できない世界を想定して事前の対策を講じたい。
今後、市町によるプレミアム商品券の発行について、県民間でサービスを受ける対象に偏りがないか、何を誰が購入しているのか、データを元に次の段階に進める政策を後押しすべきではと考える。
LPガス支援については家庭からの支援要望も多く、継続いただきたい。
こども食堂から、大人食堂や学生食堂など考え方・取り組みも広がっており、地域をつなぐ施策であり、推進いただきたい。
エネルギーコスト上昇に対する経済社会の耐性の強化
国の提示:企業や家庭における省エネの更なる促進
災害時に移動式電源となりうる電気自動車の小型化・価格低下が進んでいるため、特に家庭での導入を防災対策と紐づけて推進すること。
導入スピードが減退している自家消費型太陽光発電・蓄電池の設置を支援すること。
中堅・中小企業の賃上げの環境整備、人手不足対応、生産性向上を通じた賃上げ継続の支援、構造的賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進
賃上げを実現するには、一時的な税制優遇にとどまらず中小企業の稼ぐ力の増大が不可欠である。生産性の向上や規模拡大などとセットで賃上げ、雇用拡大に踏み切る企業への支援を行うこと。
非正規雇用にあるものは特に年収の壁の動向を様子見している人間も多いため、今後、国の制度を踏まえ支援すること。
国内で家事支援サービスの利用促進の機運が高まりつつあり、就労の在り方にも紐づくため、このサービスの新市場の形成およびサービス導入モデル構築にいち早く取り組むこと。
地方におけるリ・スキリングが、所得向上につながるモデルを構築すること。
省力化への投資分野において、自動清掃ロボットなどの導入が確かに県内では少数のため、モデル的に参加する企業群を募り進めること。
国の提示:円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化
愛媛県への海外就航便の拡大により、インバウンド客の増加が期待される。域外からお金をもたらす観光はさらに促進すべきだが、特定のエリアの動きにさせず、シャワー効果をもった観光のあり方を求めること。
また、富裕層向け宿泊施設の誘致に取り組むこと。南予、東予地域に宿泊拠点を整備すること。
中国の禁輸措置による水産物の輸出ダメージの緩和と新規輸出先の開拓を支援すること。海外ECサイト向け販売を促進すること。
人口ボーナス期にある地域との関係強化により、販路を開拓すること。
国の提示:地方活性化
国立公園の滞在体験の魅力向上、文化財等の活用、「食料安定供給・農林水産業基盤強化に向けた緊急対応パッケージ」の実行、コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくり、高速道路通勤帯割引・時間変動料金の見直し・拡大、地域における人材マッチングの支援、条件不利地域の振興 等
石鎚山系の開発に取り組むこと。
離島の交通費支援など従来から地域より要望のあがっている案件について、
条件不利地域の振興として取り組むこと。特にしまなみ海道における、医療や子育てに関して、交通費が負担となる現状を踏まえ、該当市町と連携して支援を行うこと。
四国新幹線整備を進めること。
食料自給率の向上に取り組むこと。
国の提示: 生産性向上・供給力強化を通じて潜在成長率を引き上げるための国内投資の更なる拡大
フロンティアの開拓において、宇宙・海洋開発に関して、今回の補正予算の趣旨では愛媛県では該当しにくいと理解した。
一方で全国5番目の海岸線の長さという特徴をもつ県(=海が近い県)として、海洋資源の文脈をうまく利用し、瀬戸内海資源の開発、漁場のみならず、観光開発、拠点開発、マリーナ、クルーズ船などを構想し開発に取り組みたい。
また、科学技術の振興及びイノベーションの促進においては、愛媛県であれば大学にある種(シーズ)を拾い上げることが近道ではないだろうか。
愛媛大学、松山大学はじめ、スタートアップ支援と紐付け活動を支援することが人口減少対策にもつながると考える。
また若手研究者支援に絞った条件提示を行うことで、移住や企業誘致をセットとした取り組みが必要である。
先端半導体の国内生産拠点への取り組みは、関連産業、雇用も大きいため引き続き可能性を探り積極的に取り組んでいただきたい。
Beyond5G・生成AIの産業利用、外国企業の誘致、海外起業人材の呼び込みを推進したい。
今回、国からクリエイター・アーティスト育成・文化施設の次世代型機能強化が示された。
アートは地方を訪れる、地方に残る動機になりうる。クリエイティブの領域をうまく地域政策に落とし込みたい。
国の提示:国土強靱化5カ年加速化対策推進、流域治水、公共施設、通信、交通等インフラ耐災害性の強化
線状降水帯の発生を想定し国土強靱化に継続的に取り組んでいただきたい。
また特に松山市では都市計画の設計や道路整備の遅れが目立つ。二重行政の隘路にはまらないよう、支援が必要と考える。
公共施設が防災機能をもった施設として、再生できるよう支援を行う。
国の提示:国民の安全・安心の確保
花粉症対策、不登校児童生徒への支援
日本ASEAN友好協力50周年を機とした包括的・戦略的関係の深化
経済安全保障(強靱化、国際海底ケーブルの多ルート化等)、食料安全保障(国内肥料、大豆・小麦の生産・利用拡大等
花粉症対策は国にはやく取り組んでいただきたい。まもなく飛散が・・。
さて、不登校支援対策がこの項目に並ぶことに違和感もあるが、少子化の中で増える不登校について社会として取り組む支援をぜひお願いしたい。繰り返し述べている「教育・福祉・医療・就労」が一体となった支援メニューの形成を求める。
また、今後、経済安全保障、食料安全保障の取り組みの中で構築されるサプライチェーンの中に、愛媛県産品の「すご味・もの・技」などを位置付けるべく働きかけること。
東京だけをハブとせずに、中四国・九州エリアとの連携、アジアとの連携を深めること。そのために地域を絞った条件交渉の推進、グローバル・サウスでの市場開拓を行うこと。
国の提示:デジタルによる地方の活性化
デジタル田園都市国家構想交付金によるデジタル実装のさらなる加速、データセンターの地方拠点整備の機会の呼び込みを図ること。
教育分野においては、デジタルコンテンツ、素材に触れる機会を首都圏に負けないよう進めること。
交通分野においては、自動運転の実証を推進すること。
介護現場におけるICT技術等の導入支援、ロボットによる業務改善の支援の継続を行うこと。
子育てのデジタル化については、国のいうようにプッシュ型支援を推進すること。スタートアップの参入機会の拡大を図ること。また、愛媛県の進めるデジタル人材の育成から所得向上までの道筋を示してしていくこと。
国の提示:人手不足等に対応する制度・規制改革及び外国人材の活用
•物流:「2024年問題」に対応する「物流革新緊急パッケージ」の推進、物流DX推進
•自動運転等の社会実装:自動運転車の事業化加速、デジタル対応の物流拠点整備、デジタルライフラインの構築
•建設・建築:適切な労務費確保、資材価格の適切な価格転嫁、監理技術者の配置柔軟化
•医療・介護:高齢者施設における経営の協働化・大規模化支援、人員配置基準の特例的な柔軟化、介護サービスでの複数事業所での管理者の常勤・専従要件の明確化・緩和
•外国人材:特定技能の対象分野の追加検討・措置、外国人材を対象とした日本語教育の推進
物流の24年問題について必要なコストを割り出し、予算措置を講じること。特に情報を収集し、デジタル的な観点で効率を上げる仕組みづくりを行うこと。また、県民にとって他人事ではなく、生活に影響が出る可能性があるという認識のもと、情報を公開すること。
外国人材の確保について、地域間競争の激化から条件提示の差が出ている。各地で行われている支援メニューを踏まえ、専門学校への奨学金といった具体的な予算を投じ、教育から就労までつなぐこと。また就労者には愛媛県ならではの支援(県産品のプレゼントなど)を行い、愛媛県のプレゼンス向上に努めること。
国の提示:こどもが健やかに成長できる環境整備を通じた少子化対策の推進
働き方改革、子育て支援を行う中で、社会全体で子どもを教育する、育てるという意識と体制の醸成が必要である。例えば、年末年始、お盆の時期での受け入れ先のない幼稚園児について、保育園児と同様に預かり保育への支援を充実させること、そういった取り組みを行う市町を支援すること。また、子供の遊び場の確保、首都圏とのデジタル教育格差の解消に努めること。
国の提示:教育DXフロンティア戦略を始めとする公教育の再生
1人1台端末の計画的更新、生成AI等の利活用含め、個別最適な学びをサポートする仕組みの構築に向けた検討加速、1人1台端末を活用した「心の健康観察」導入支援 等
国が示す教育支援は少子化の中で手厚くサポートをするという流れである。
しかし、単に手法ではなく、「なぜ・なんのために何を学ぶのか」という根源から提示し、腹落ちした上で教育を進めるべきであり、愛媛県においてはこの方向性を深めたい。例えば観光を促進するために言語・歴史・コミュニケーションを学ぶ、新しい産業を起こすために学ぶ、社会で生活するために学ぶ、そのための一台端末、生成AIであるといった位置付けを行なった上で、社会教育を進めていくべきだと考える。
国の提示:女性活躍の推進、高齢者活躍の推進、孤独・孤立、障害者など困難に直面する方々への支援
「愛媛県の」女性が求める支援の的確な把握と支援メニューの充実をはかること。また高齢者の活躍・孤独・孤立、障害者など困難に直面する方々への支援のため、働く場の創出、社会との繋がりの創出を図ること。またそのための必要な支援メニューの作成を通じ新しい市場を創出すること。
以上、よろしくお願いします。