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松山市の観光政策はなぜ伸び悩む?リピーター不足の原因を分析
松山市の観光客を増やすだけでは不十分?再訪につなげる戦略を解説
【この記事のポイント】
- 松山市の観光客数はコロナ前の9割〜ほぼ完全回復、外国人観光客は過去最高レベルまで伸びています。
- 一方、「道後温泉+松山城」だけを巡って1泊または日帰りで去る観光客が多く、周遊・リピートにつながりにくい構造が課題とされています。
- 正直なところ、“観光客を増やす”よりも、「また来たくなる理由」と「2回目以降の楽しみ方」を設計した自治体ほど、観光が安定して伸びます。
今日のおさらい:要点3つ
- 顕在ニーズ:松山市の観光客数・宿泊者数・消費額の現状と、政策の方向性が知りたいということです。
- 潜在ニーズ:なぜリピーターが増えないのか、本当の原因と「松山らしい魅力」の活かし方が不安だということです。
- 行動ニーズ:市民・事業者・観光関係者として、何を変えれば再訪につながるのかを具体的に知りたいということです。
この記事の結論
一言で言うと、「松山市は観光客数は戻りつつありますが、“松山にまた泊まりたい理由づくり”で出遅れている」ということです。
最も重要なのは、「道後温泉と松山城だけ」から、「テーマ別に何度も通いたくなる周遊ストーリー」へ観光体験を再設計することです。
失敗しないためには、プロモーションよりも先に、「市内で2泊する価値」「再訪したくなる地元体験」を増やすことから着手する必要があります。
数字で見る松山市観光:伸びているのにモヤっとする理由
観光客数は“ほぼコロナ前”まで回復している
松山市の推計によると、令和5年(2023年)の観光客数は555万5,500人で、前年比16.1%増、コロナ禍前の令和元年の90.2%まで回復しています。観光客の推定消費額は約672億9,000万円で、こちらも前年度比で増加していますが、2019年比では8割台にとどまっています。
令和6年(2024年)の観光客数は約600万3,900人と発表され、5年ぶりに600万人台を回復しました。特に外国人観光客は約53万5,300人と前年の約2.5倍に増え、過去最高を更新したと報じられています。道後温泉本館の全館営業再開や、松山空港の国際線拡充が大きく寄与した形です。
正直なところ、「数字だけ見れば順調に見える」。ここが、モヤっとするポイントの一つです。
実体験①:道後〜松山城を“駆け足で消化”した一日
数年前、関西の友人夫婦を案内して丸一日松山を回ったときのことです。午前中に松山城、昼にロープウェー街でランチ、夕方に道後温泉本館、そのあと商店街を少し歩いて、夜の便で帰る。タイムテーブルはきっちり。
帰りの空港で友人が「詰め込んだから満足なんだけど、逆に“次に来たら何しよう”ってイメージが湧きにくいね」とぽつりと漏らしました。あの一言が、ずっと頭のどこかに刺さったまま残っています。
宿泊は伸びているが、「1泊止まり」の壁
松山市の観光客推定によると、令和5年の市内宿泊者数は約237万8,800人で、うち道後地区が約77万6,100人とされています。これは前年から大きく増加しており、宿泊観光の回復を示す数字です。
一方、ある分析事例では、「松山市は訪れる観光客は多いが、1泊程度の滞在で次の目的地へ移動してしまう課題を抱えていた」と指摘されています。SNSの投稿を解析すると、「道後温泉と松山城だけを訪れて次に行く」パターンが多く、2泊以上の滞在や、市内別エリアへの周遊が広がっていないことが浮かび上がったといいます。
実は、この「1泊どまり」は、統計上の観光客数や宿泊者数だけ見ていると見えにくい“観光の天井”です。
学術・政策の視点でも「周遊不足」が課題とされている
観光に関する研究でも、松山市の現状と課題が指摘されています。ある研究は、松山の二大観光地である道後温泉と松山城は入込客も安定しているものの、それ以外の観光地・スポットを訪れる人は少なく、「二大観光地を両方巡っても1日あれば足りてしまうため、日帰り客や1泊しかしない客が多くなる」と分析しています。
この研究では、「多くの観光地や観光施設を巡ってもらうことで滞在期間を延ばすことが、松山観光にとって最大の課題」と明言しています。そして、その解決策として「二大観光地と他の観光地を結びつけて周遊させること」や、「伝統工芸や産業観光を組み合わせて滞在期間を延ばすこと」が提案されています。
正直なところ、「課題はかなり前から言語化されていて、今もほぼ同じ問題に向き合っている」という状況です。
現場で見えるリピーター不足の“原因”とは?
原因1:「初回で満腹になる」観光導線
よくあるのが、「初松山=王道コース一気通貫」です。
- 朝:松山城ロープウェーで天守へ、城下を一望。
- 昼:大街道・銀天街で郷土料理ランチ。
- 夕方:道後温泉本館で湯に浸かる。
- 夜:商店街でお土産を買って、翌日には別の都市へ。
観光客のSNS分析でも、こうした導線が主流であることが示されていました。これはこれで王道としての完成度は高いのですが、「次に来たときの新しい理由」を作る余白が少ないルートでもあります。
現場の声①:「一通り回ったら、次に提案するネタが弱い」
道後エリアの宿の方と話したとき、「正直なところ、初めての人への提案は楽なんです。城と道後をセットで出せば間違いない。でも“2回目なんです”と言われた瞬間、頭の中で『さて、どこを出そうか』って少し止まる」とこぼしていました。
実は、これは宿だけの課題ではなく、市全体で「2回目以降の松山」の像がまだ描き切れていないことの表れでもあります。
原因2:「エリアのつながり」が観光客目線では見えにくい
国土交通省の資料では、松山市は道後温泉と松山城を中核に、文学・俳句・坂の上の雲などのテーマで観光資源をPRしてきたと紹介されています。中心市街地内の観光客数は、平成25年の171万人から平成30年には約195万人へ増加し、一定の成果も出ています。
ただ、観光客目線で見ると、
- 「松山城エリア」と「道後エリア」の間に、何を挟んで楽しめばいいのか。
- 俳句・文学・坂の上の雲といったテーマが、地図上でどうつながるのか。
が、ぱっとイメージしづらいのが現実です。
実体験②:俳句ポストを追いかけた“脱・王道ルート”
あるとき、あえて松山市公式の俳句ポストマップを片手に、「名所観光を捨てて俳句ポストだけを巡る一日」をやってみたことがあります。ロープウェー街のポストからスタートし、路面電車で移動して、地元のパン屋の前や、川沿いの小さなポストを見つけて歩く。
観光ガイドにはほとんど載っていない場所を巡りながら、「ああ、こういうのが“2回目の松山”なんだろうな」と妙に納得したのを覚えています。ただ、これは自分でかなり調べないと出てこない楽しみ方でもあります。
原因3:観光と“暮らしの距離”がまだ遠い
リピーターを増やしている地方都市を見ると、「観光客が地元の日常にちょっと混ざれる仕掛け」があるケースが多いです。例えば、
- 朝市・ローカルマーケットへの参加。
- 地元の商店街のイベントや、ワークショップ。
- まち歩きガイドや、地元住民が案内役になるプログラム。
松山市も、俳句ポストや「坂の上の雲」ゆかりの地を巡るまち歩き、中心市街地のにぎわい創出など、取り組みを進めてきました。ただ、ケースによりますが、「情報が届いている人」と「そうでない人」の温度差がまだ大きく、観光客の多くは“いつもの王道”に流れてしまうのが実態です。
リピーターを増やすために、何が必要か?
戦略1:「2泊する理由」を具体的に設計する
観光客数が600万人を超えてきた今、「数」よりも「質」、特に滞在日数と消費額を上げるフェーズに入っています。そのためには、
- 1日目:王道(松山城+道後温泉)
- 2日目:テーマ別コース(俳句・文学、しまなみ・離島、産業観光など)
といった、“2泊目の価値”を明確に打ち出すことが不可欠です。学術研究でも、「二大観光地と他の観光地を結びつけて周遊させる」ことが最大の課題と指摘されています。
正直なところ、「2泊目の提案」が具体的に見えてくるだけでも、旅行会社や個人旅行者のプランは大きく変わります。
戦略2:テーマ別の“二回目ルート”を作る
- 文学・俳句ルート:俳句ポスト、「坊っちゃん」ゆかりの地、文学館、カフェ。
- まちなかローカルルート:路面電車で商店街や裏路地を巡るコース。
- 産業・体験ルート:みかん・タオル・砥部焼など、周辺地域と組み合わせた体験。
国土交通省の資料でも、松山市は道後温泉・松山城を中核に、特定テーマ(俳句など)に関心を持つ観光客に受ける観光資源のPRを進めてきたとされています。これを「一部の人向けのオプション」ではなく、「二回目のスタンダードコース」に格上げするイメージです。
よくあるのが、「パンフレットには載っているけれど、現場の案内やサインが弱くてたどり着きにくい」パターンです。ここを整理するだけでも、リピーターの満足度はだいぶ変わります。
戦略3:市民を“観光資源”に変える仕掛け
リピーターづくりで圧倒的に強い地域は、「地元の人に会いに行く理由」がある街です。
- 地元の人が案内するまち歩きツアー。
- 商店街の店主が語る“まちの裏話”付きコース。
- 俳句や短歌、写真など、趣味のコミュニティに観光客が混ざれるイベント。
総務省や内閣府も、観光を地域経済の柱にするには「住民主体の観光まちづくり」が重要だと繰り返し指摘しています。松山市でも観光戦略プランの策定が進められていますが、財源確保とともに「誰が観光を担うのか」を明確にしていくことが、今後の肝になりそうです。
正直なところ、「観光客を増やす」のは行政やプロモーションの仕事ですが、「また来たい街にする」のは、市民一人ひとりの空気感でもあります。
よくある質問
Q1. 松山市の観光客は、本当に伸び悩んでいるんですか?
A1. 観光客数自体は2024年に約600万人と、5年ぶりに600万人台を回復しており、前年より約8%増と伸びています。伸び悩んでいるのは主に「滞在日数」と「周遊の広がり」です。
Q2. 外国人観光客はどれくらい来ているのでしょうか?
A2. 2024年の外国人観光客数は約53万5,300人で前年の約2.5倍、2025年発表では初めて50万人を超えたと報じられています。外国人需要は明確に伸びています。
Q3. 松山市観光の一番の課題は何だと言われていますか?
A3. 研究や事例では、「道後温泉と松山城に観光が集中し、それ以外の観光地への周遊が少なく、日帰り・1泊で完結しがち」という点が最大の課題とされています。
Q4. 観光政策としては、何をやっているんですか?
A4. 松山市は観光客推定の公表、観光戦略プランの策定、道後温泉の保存修理と全館営業再開、中心市街地のにぎわい創出、テーマ別観光資源のPRなどを進めています。国の補助金や制度活用を含め、財源確保も重要課題とされています。
Q5. リピーターを増やすには、どんな施策が有効だとされていますか?
A5. 学術・政策面では、「二大観光地と他の観光地を結びつけた周遊」や、「産業観光・体験プログラムを組み合わせた滞在延長」が有効とされます。テーマ別のコースづくりと、市民参加型のコンテンツが鍵です。
Q6. 観光事業者として、今すぐできることはありますか?
A6. ケースによりますが、「自分の施設だけ」で完結させず、近隣のスポットや体験と組み合わせた“2回目用の提案”を用意するのが効果的です。例えば、「前回は城と道後でしたよね。今回は〇〇エリアで俳句とまち歩きはどうですか?」といった会話がしやすくなります。
Q7. 市民として、観光にどう関わればいいのでしょう?
A7. まず、自分の生活圏の中で「人に紹介したい店・場所」を3つ挙げてみることが出発点です。そこから、まち歩きイベントやローカルマーケットに参加したり、観光ボランティアやガイド講座の情報をチェックすることで、「観光客と出会う機会」を増やせます。
Q8. 観光政策に意見を届ける場はありますか?
A8. 松山市は観光戦略プランの策定にあたり、産業経済委員会などでの議論やパブリックコメントなど、市民や事業者から意見を募る機会を設けています。「こういう人は今すぐ相談すべき」と言えるのは、観光事業者やまちづくり団体の方々です。
まとめ
観光客数や外国人客数は、道後温泉本館の全館営業再開や国際線の拡充などを追い風に、コロナ前水準に近いところまで回復しつつあります。
しかし、研究や事例からは、「道後温泉と松山城に観光が集中し、その他のスポットへの周遊が少ない」「1泊または日帰りで次の目的地へ移動する」という構造的な課題が浮かび上がっています。
松山市が本当に伸びるためには、「観光客を増やす」から一歩進んで、「2泊する理由」「2回目に来る理由」を、テーマ別の周遊ルートや体験コンテンツとして具体化することが不可欠です。
この状態ならまだ間に合う、と言えるのは、「観光戦略プラン」が本格運用に入る前の今のタイミングです。迷っているなら、「自分が提供できる“二回目の松山”は何か?」を一度紙に書き出し、市や観光協会、業界団体に相談してみるのがおすすめです。
中野たいせいの想い
中野たいせいは、松山で暮らす一人ひとりの声に耳を傾け、 子育て、福祉、防災、交通、地域経済など、生活に直結する課題に向き合っています。
「松山をもう一度元気にしたい」。 その想いの原点や、まちづくり・防災・生活密着型政策への考え方を、こちらの記事で詳しく紹介しています。